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空き家問題の本質2 解決策はあるか

JUGEMテーマ:不動産投資

 

 

空家問題の本質2 解決策はあるか

 

空き家は景観、防犯、安全などの多くの問題を抱える

 

 

 

野澤千絵「老いる家 崩れる街」を読みました。

人口が減り続けるのに新しい家がどんどん建つ「住宅過剰社会」日本の現状と問題点、解決策を「都市計画」の観点から論じる。

開いた口がふさがらないような阿呆な議論ばかりが目に付く「空き家問題」において、本質的であり、「本当に解決するためにはどうしたらいいか」という現実感覚をもって書かれた非常に素晴らしい本でした。この問題にかかわる政治家や、既得権益を守ろうと文句ばかり言っている我が不動産業界の人々は、是非とも読んで、自分がいかに阿呆なことを言っているかを考えてほしいものです。

 

問題意識も解決策も、全体的にとても共感の持てる内容でしたが、いくつかこの本に触れられていないことで重要なポイントがあると思います。それはテクノロジーの進歩です。特に2点。

  • 住宅そのものにおける技術革命
  • 移動手段における技術革命

 

この本でも解決策の方向性として提示されているコンパクトシティ。人口減、税収減を考えれば、日本全国でインフラは徐々に(もしくは急速に)縮小に向かうことは避けられない。だからコンパクトシティを目指す、というのは大きな方向として間違ってはいないと思います。

しかし一方で、「人と違う生活を送りたい」「自然の中で生活したい」というようなスローライフ思考というか自然志向は、大きな、そして自然な流れです。人は効率だけでは生きられません。

 

FBでも引用しましたが、ウクライナのスタートアップ企業は、24時間、350万円で建てることのできる家を開発しました。

 

https://www.businessinsider.jp/post-1637?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook

 

この家は、完全独立型です。もちろんアクセスのための道路は必要ですが、それ以外のインフラは基本的に必要ないのです。

こういった動きはこれからますます活発になってきます。いまでさえ350万円から。20年後にはもっともっと手軽になり、完全に自立できる家が選びたい放題、になっている可能性は高いです。

 

世界中の英知が「自動運転車」の実現を目指してしのぎを削っています。いつ実現するかは議論があり、正確な予想は不可能ですが、いつかは実現します。大きな流れは完全にパーソナルモビリティに向かっています。コンパクトシティを目指して、大金をかけてモノレールを整備してもそのうちだれも使わなくなるかもしれません。

 

勿論これらを実現するには少なくとも(空を飛ぶことが普通になるまでは)道路が必要だし、いずれにしてもある程度お金を持った人から使えるようになっていくのでしょう。

 

生活に必要な機能とインフラは、道路を除き極コンパクトなエリアにまとめる。

 

利便性と経済性を求める人はコンパクトにまとまった街に住み、自由と自然を求める人は人が少なくなって獣が跋扈する山の中に住む。

どこでも仕事ができるような社会にどんどん変化していくのは間違いないので、街に住む人も、気が向けばいつでも自然の中に入り、自然を楽しみ、仕事もできる。

こんなイメージが、我々の目指す社会ではないかと、僕は想像しています。

 

Vehicle Prototype Image2

 

そんな社会を実現していくためにはどうしたらいいのか。

「老いる家 崩れる街」では、誠意のある、現実に沿った解決策が示されています。

  • まずは新規に開発する住宅地、新しく建てる家、だけでも都市計画の運用を厳格化し、徐々に集中を図っていく
  • 議論を尽くして作り上げた「まちのまとまり」エリアの魅力を高め、そこに集約していくための様々な公的支援、税的支援を行う

 

これは、今活発に議論されているコンパクトシティの実現方法として一般的な考え方だと思いますが、しかし、「これでほんとにそうなるかな」と僕の五感は疑問を呈します。徐々にそういう方向に向かうことはできても、あまりに時間がかかる。「老いる家 崩れる街」でも再三指摘されていますが、現状は非常にシビアで、我々に残された時間は多くはありません。

 

 

今の今まで、日本の都市計画は「増分主義」によって立っていました。人口が増え、所得が増え、税収が増える。そういう社会では、社会の方向性を絞るときに「メリット」を提示するのが有効です。しかしいったん歯車が逆回転すれば、「メリット」を提示する財源は心もとなく、大きな方向転換ができるとは思えません。

 

僕は、本当の意味で、時代の変化に間に合うようにコンパクトシティを実現するための唯一の方向は、「デメリットを提示する」ことであると考えています。

 

上記のように、道路は、それが華美なものではなくても最も重要なインフラですが、それでも縮小は免れません。行政は、各自治体は、今後の道路縮小の明確なロードマップを提示する。そしてそれは、行政が最低限守るコミットメントになります。

それ以外のインフラも、きちんとロードマップを提示したうえで、それに沿ってどんどん縮小していく。

 

勿論現実的な準備期間は必要ですが、そうやってインフラが縮小されていけば、郊外で暮らすのは困難になってきます。そして、そうなった人を十分に受け入れられる体制を、コンパクトシティ内に整備する。

 

メリットではなくデメリットでコンパクトシティを実現する。いささか非人道的な話のようですが、我々の社会は、本当にのっぴきならないところまで来ているのです。

 

「理想は理想」「現実は現実」。空き家問題、住宅問題に限りませんが、理想だけ語り、現実的な解決を模索しない人々は、僕はとても無責任だと思います。自分のことだけ、自分の商売のことだけを考えて、将来の我々の子ども、孫の世代のことを考えない人々も同じように無責任だと思います。

「理想をもって現実的に考える」。考えるだけじゃ意味ないんじゃないの?そんなことはありません。人は常に行動し、コミュニケーションを取っています。そしてそのもとになるのは「自分の考え」であり、それはあらゆる行動において発露するのではないでしょうか。(2017年4月23日)

author:oneman-band, category:不動産一般, 11:10
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